プロジェクトX

プロジェクトX〜挑戦者たち


ヒューザーの挑戦。奇跡の100平米マンション。


そのとき、小島は意外な事を言った。
鉄筋を減らしてみたらどうだろう。
姉歯は戸惑った。
RC造を人体に例えると、コンクリートは肉、鉄筋は骨にあたる。
それを減らそうと言うのだ。
無理です。出来ません。
小島は思わず叫んだ。
俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で造り上げるんだ。
男の熱い思いに、姉歯は心をうたれた。
技術者の血が騒いだ。
やらせてください。
夜を徹しての設計作業が始まった。


鉄筋を減らし、材料費を削り、耐震性は確保する。
まったく矛盾する作業だった。
技術的に不可能と思われた。
他の設計士にも相談した。
文献も読みあさった。
しかし、出てくる答えは一つ、「不可能」。
しかし姉歯は思った。
「出来る、いやできると信じなければ出来ない」
姉歯は図面を引いた、繰り返し、繰り返し、、、
一日がすぎ、一週間がすぎ、一ヶ月が過ぎようとしていた。
しかし、図面は上がらなかった。
頭の中には一つの言葉しか出てこなかった「不可能」。
そのとき、姉歯はふと思った。
「不可能なんだ、不可能なことをやろうとしているんだ、」


そこへ木村が現れた。
そしてこうつぶやいた。
「考え方を変えるんだ。」
「耐震性を保つと言うことはどういうことか、考え方の根本を変えるんだ」
姉歯には理解が出来なかった。
木村はこう続けた。
「耐震性があるということは、実際の地震で建物が倒れる危険性が無いと言うことだろうか?
いや、設計士にとって、耐震性があるということは、建築確認で耐震性があると認められることなのではないか。」
暗闇に光がさした気がした。
姉歯は、また机に向かった。


もう外は明るくなりかけていた。
そして、姉歯はおもむろに顔を上げた。
「出来た」
姉歯設計第一号が完成した。
木村も駆けつけた。木村ともに一人の男も駆けつけた。
内河だった。
木村、内河、そしてあとから駆けつけた小島。
4人で杯を交わした。
内河が言った。
「これからだぞ、これからだ、この設計が、検査確認期間を通して始めて完成だ」
姉歯は、身の引き締まる思いがした。
明日は日本ERIに確認申請を出す日だ。